大阪地方裁判所 平成7年(ワ)10079号 判決 1998年11月19日
福岡県北九州市小倉南区徳力新町一丁目一八番二〇号
原告
株式会社アーランド
右代表者代表取締役
渡邊新司
右訴訟代理人弁護士
小原望
同
東谷宏幸
右小原望訴訟復代理人弁護士
豊島茂長
福岡県北九州市小倉北区緑ヶ丘三丁目六番九号
被告
カースル産業株式会社
右代表者代表取締役
渡辺健司
右訴訟代理人弁護士
辰巳和正
同
得本嘉三
同
飯田秀郷
同
栗宇一樹
同
和田聖仁
右飯田秀郷訴訟復代理人弁護士
早稲本和徳
主文
一 被告は、特許番号第一八八二三六三号の特許権に基づいて、原告が、別紙物件目録一記載のレンジフード用フィルター装置及び別紙物件目録二記載のレンジフード用フィルター装置を製造、販売することを差し止める権利を有しないことを確認する。
二 被告は、原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成七年一〇月一三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決は、第二項に限り仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 請求
主文第一、第二項同旨
第二 事案の概要
一 事実関係(いずれも争いがないか、弁論の全趣旨によって認められる。)
1 原告は、プラスチック製家庭用品の製造、販売等を業とする株式会社であり、被告は、プラスチック製日用品雑貨、家庭用雑貨製品の製造、販売等を業とする株式会社である。
2 原告製品
原告は、別紙物件目録一記載のレンジフード用フィルター装置(以下「物件一」という。)及び別紙物件目録二記載のレンジフード用フィルター装置(「以下「物件二」という。)を製造、販売している(ただし、物件一については、現在製造、販売を中止しているが、将来再開の可能性がある。)。
3 被告の権利
被告は、左記の特許権〔以下「本件特許権」といい、別添特許公報(以下「本件特許公報」という。)の「特許請求の範囲」請求項1にかかる発明を「本件発明<1>」、請求項3にかかる発明を「本件発明<2>」という。〕を有している。
特許番号 第一八八二三六三号
登録日 平成六年一一月一〇日
発明の名称 排気口へのフィルター取付け方法
出願日 平成二年一月二八日(特願平二・一七五六〇号)
出願公告日 平成六年二月二日(特公平六・七八九五号)
特許請求の範囲
「【請求項1】装着しようとする排気口を覆う広さのシート状のフィルターで該排気口の入口を直接覆い、該フィルターの周囲を点在する複数の把手付きのマグネットホルダーによって押さえて該排気口に固定することを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。」
「【請求項3】予め、装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取付け、その上から該排気口を覆う所定広さのフィルターを被せ、前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止したことを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。」
4 被告の行為
被告は、原告が物件一及び物件二を製造、販売する行為は、本件特許権を侵害すると主張しており、原告の取引先である清水産業株式会社(大阪府守口市佐太中町六-二三-四三所在)及び株式会社コジット(大阪市鶴見区放出東一-二九-一〇所在)に対し、その旨を口頭で告知した(以下、「本件告知行為」という。)。
なお、本件告知行為が行われた時期につき、原告は、平成七年一月頃と主張するのに対し、被告は否認している。
二 原告の請求
本件は、物件一及び物件二を製造、販売している原告が、物件一の取付方法は本件発明<1>の、物件二の取付方法は本件発明<2>の技術的範囲に属しないし、また、物件一は本件発明<1>の、物件二は本件発明<2>の実施にのみ使用する物でもないから、物件一及び物件二を製造、販売する行為は本件特許権を侵害するものとみなされるものではないと主張して、物件一及び物件二を製造、販売することにつき被告が本件特許権に基づく差止請求権を有していないことの確認を求めるとともに、本件告知行為は虚偽の事実を流布したものであり、原告の営業を妨害する不法行為を構成するところ、本件告知行為によって原告は取引先を失うなどの損害を被ったと主張して、損害賠償として金五〇〇万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成七年一〇月一三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。
三 争点
1(一) 物件一の取付方法は本件発明<1>の技術的範囲に属するか。
(二) 物件一は本件発明<1>の実施にのみ使用する物か。
2(一) 物件二の取付方法は本件発明<2>の技術的範囲に属するか。
(二) 物件二は本件発明<2>の実施にのみ使用する物か。
3 本件発明<1>及び本件発明<2>には無効事由が存するか。
4 原告は、本件特許権につき先使用に基づく通常実施権を有するか。
5 本件告知行為は、被告の原告に対する不法行為を構成するか。
6 被告が、原告に対し損害賠償義務を負う場合に支払うべき金銭の額。
第三 争点に関する当事者の主張
一 争点1(一)(物件一の取付方法は本件発明<1>の技術的範囲に属するか)及び争点1(二)(物件一は本件発明<1>の実施にのみ使用する物か)について
【被告の主張】
1(一) 本件発明<1>の構成要件を分説すると、次のとおりである。
A 装着しようとする排気口を覆う広さのシート状のフィルターで該排気口の入口を直接覆い、
B 該フィルターの周囲を点在する複数の把手付きのマグネットホルダーによって押さえて該排気口に固定する
C ことを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。
(二) 物件一の取付方法は、別紙物件目録一の図10のとおりであって、分説すると次のとおりである。
a 装着しようとする排気口を覆う広さのレンジフードフィルターで該排気口の入口を直接覆い、
b 該フィルターの周囲を点在する最大六個の把手付きの磁石によって押さえて該排気口に固定する
c ことを特徴とする排気口へのフィルター取付方法。
(三) 物件一の取付方法の構成を本件発明<1>の構成要件と対比すると、構成aは構成要件Aを、構成bは構成要件Bを、構成cは構成要件Cをそれぞれ充足するので、物件一の取付方法は本件発明<1>の技術的範囲に属する。
2 物件一は、レンジフードフィルターと把手付き磁石とをセットにして、取付方法の説明書とともに一体として販売されている。このように、部品をセットにした商品の場合には、当該商品の購入者は各部品がセットとなった商品を一体として使用するために購入するのであって、その中の個々の部品を個々的に使用するために購入するのではない。したがって、セット商品につき、「実施にのみ使用」する物か否か、すなわち、他の用途があるか否かについて検討するに当たっては、セット商品を一体として、経済的・商業的・実用的な使用可能性があるか否かを検討すべきであり、セットを構成する個々の部品についての他の用途があるか否かを検討すべきではない。
物件一を構成するレンジフードフィルター及び把手付きの磁石のそれぞれは、単独で使用することが可能であるとしても、セット全体としては、本件発明<1>の実施に使用する以外の使用は考えられないから、物件一は、本件発明<1>の実施にのみ使用する物である。
【原告の主張】
1 物件一を構成する磁石を入れた突起付きケースの突起部分は、排気口を覆うフィルターを磁石並びにケースによって固定する際の固定面積を大きくするためのものであって、磁石を取り外す際の「把手」ではないし、その形状も本件発明<1>の実施例とは異なる。
また、例えばフィルターを換気口の金属部分の角が九〇度に折れ曲がった部分に取り付ける場合には、右突起部分を九〇度折り曲げることで、フィルターを押さえることが可能になることから、突起部分が折り曲げて使用する場合があることが想定されるが、この場合にも、あくまでも突起部分はフィルターを押さえるために使用されるのであって、「把手」として使用されるわけではない。
したがって、物件一の磁石を入れた突起付きケースは、本件発明<1>にいう「把手付きマグネットホルダー」には当たらないから、物件一の取付方法は、本件発明<1>の技術的範囲に属しない。
2 物件一を構成するフィルター及び把手付き磁石は、次のとおり、社会通念上経済的、商業的ないしは実用的と認められる用途が存在し、いずれも本件発明<1>の実施にのみ使用される物ではない。
(一) フィルターについて
フィルターは、レンジフードのみならず、換気扇のフィルター、エアコンのフィルター、空気清浄機のフィルターなどにも用いることができるものであって、現実にもエアコンなどに用いられている例もあるから、物件一を構成しているフィルターが本件発明<1>の実施にのみに使用される物ではないことは明らかである。
(二) ケース入磁石について
磁石単体が文房具店などで販売されていることからも明らかなとおり、磁石は、物件一の取付方法のようにレンジフード用フィルターの取付に限らず、金属板を使用した製品に物を止めるのに広く用いられていて、他の実用的といえる用途は多数ある。しかも、市販されている磁石には、把手のついたマグネットホルダーに入った磁石もあるのであって、把手付きであるから本件発明<1>の実施にのみ使用する物ということにはならない。
二 争点2(二)(物件二の取付方法は本件発明<2>の技術的範囲に属するか)及び争点2(二)(物件二は本件発明<2>の実施にのみ使用する物か)について
【被告の主張】
1(一) 本件発明<2>の構成要件を分説すると、次のとおりである。
A 予め、装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取付け、
B その上から該排気口を覆う所定広さのフィルターを被せ、
C 前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止した
D ことを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。
(二) 物件二の取付方法は、別紙物件目録の図7のとおりであって、分説すると次のとおりである。
a 装着しようとする排気口の周囲にマジックテープを取付け、
b その上から該排気口を覆う広さのレンジフードフィルターを被せ、
c 前記マジックテープの鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止する
d ことを特徴とする排気口へのフィルター取付方法。
(三) 物件二の取付方法の構成を本件発明<2>の構成要件と対比すると、構成aでいうマジックテープは、基体の表面に鉤状突起が設けられ、その基体の裏面には接着剤が塗布されいて、その上に保護紙が貼られており、使用するに当たってはこの保護紙をはがして排気口の周囲に接着するものであるから、排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取り付けるということができ、構成要件Aを充足する。また、構成bは構成要件Bを、構成dは構成要件Dをそれぞれ充足するから、物件二の取付方法は本件発明<2>の技術的範囲に属する。
2 物件二は、フィルターとマジックテープからなる。もともとマジックテープは、鉤状突起が基盤に取り付けられたもの(雄)と、この鉤状突起に係合するループ状のものを基盤に取り付けたもの(雌)とが対になって使用されて、鞄や袋物を開閉自在とするものであり、一方のみでは開閉自在という機能を実現することはできない。物件二を構成するマジックテープは、鉤状突起が基盤に取り付けられたもの(雄)のみであって、この鉤状突起に係合するループ状のものを基盤に取り付けたもの(雌)は含まれておらず、フィルターと一緒であって初めて用をなすことからすると、フィルターとマジックテープ(雄)がセットとして販売されている物件二は、本件発明<2>の実施にのみ使用される物というべきである。
【原告の主張】
1 物件二においては、フィルターを排気口に固定する部材として、いわゆるマジックテープが備え付けられているものであるが、マジックテープは、その表面にループ状の輪を多数有し、当該ループ状の輪の一部に切れ目が設けられているもので、本件発明<2>の構成要件Aの「鉤状突起が設けられた基盤」とは明らかに異なり、実施例の図面における「鉤状突起が設けられた基盤」の形状とも明らかに異なる。
したがって、物件二のマジックテープは、本件発明<2>の「鉤状突起が設けられた基盤」に当たらないから、その取付方法は、本件発明<2>の技術的範囲に属しない。
2 マジックテープの雄側のみを使用している例は、本件発明<2>の実施以外にも広く見られる。
原告は、マジックテープの使用用途例につき、製造メーカーの株式会社クラレに照会したところ、これに対する回答(甲一〇の1・2)によっても、マジックテープの雄側は、それのみで多種の分野において種々の用途に用いられていることが明らかであり、本件発明<2>の実施以外にも経済的、商業的、実用的な使用方法が存することは明白である。
3 被告は、原告がマジックテープの雄側とフィルターとをセットとして販売している以上、マジックテープの雄側は本件発明<2>の実施にのみ使用される物であると主張するが、右主張も全く的外れである。すなわち、裁縫用具店等で市販されている粘着テープ付のマジックテープは、なるほど雄側と雌側をセットとして販売しているのが通常であるが、右市販のマジックテープを消費者が自分自身で購入の上、その雄側を用いて原告の販売しているフィルターをレンジフードに取り付けるのに使うことには何ら権利侵害の問題は生じないはずである。原告は、消費者が右のように市販のマジックテープを購入する手間を省くために、予めマジックテープの雄側とフィルターとをセットとして販売しているにすぎず、そうである以上、セットで販売していることが間接侵害を構成する理由には全くなり得ないと言うべきである。このことを裏返せば、物件二を構成するマジックテープの雄側は、市販されているマジックテープの雌側とセットで用いることにより、本来のマジックテープの用法どおりにも使用することが可能であることを意味し、このことからも、物件二を構成するマジックテープの雄側には、社会通念上、経済的、商業的ないし実用的と認められる使用方法が他に存在することが明らかである。
三 争点3(本件発明<1>及び本件発明<2>には、無効事由が存するか)について
【原告の主張】
1 仮に、形式的には、物件一の取付方法が本件発明<1>の、物件二の取付方法が本件発明<2>の、それぞれ技術的範囲に属するとしても、あるいは物件一は本件発明<1>の実施にのみ、物件二は本件発明<2>の実施にのみそれぞれ使用する物であったとしても、本件発明<1>及び本件発明<2>は後記(一)及び(二)のとおり無効事由を有しているから、被告は、本件特許権に基づく差止請求権を有しない。
(一) 本件発明<1>について
本件発明<1>は、排気口を覆うフィルターを磁石により取り付けることを内容とするものであるところ、取り付けられるフィルターそのものは、レンジフードに限らず、換気扇用フィルターやエアコン用フィルターにも用いられるもので、交換用のフィルターそのものには何らの発明も含まれていない。
また、磁石により物を挟んで取り付けるということも、磁石そのものの使用として一般に広くなされている方法にすぎず、このような磁石は一般に文具店等でも容易に入手可能であり、その用法も専ら本件発明<1>にいう取付方法に用いる目的のみで市場に置かれているわけではない。
したがって、本件発明<1>は、明らかに公然周知の技術のみから構成される発明というべきであり、本来、特許の要件を満たさないものであって、特許法一二三条一項二号の無効事由がある無効な特許というほかない。
(二) 本件発明<2>について
マジックテープそのものは、鞄や財布、その他の袋物のほか様々な製品において開口部を閉じる際の部材として用いられており、裁縫用具店その他で様々な用途に用いられることを前提に販売されているものであって、フィルターをマジックテープによって固着するという方法も、公然周知の技術のみから構成される取付方法というべきである。
さらに、訴外三菱アルミニウム株式会社(以下「三菱アルミニウム」という。)は、本件発明<2>のようなマジックテープを用いた取付方法によるレンジフードフィルターを、平成元年一〇月一五日から製造、販売しており、仮にマジックテープも本件発明<2>の「鉤状突起が設けられた基盤」に含まれるとした場合には、そのような取付方法は本件発明<2>の出願当時、公然と実施されていた。
よって、本件発明<2>も、特許法一二三条一項二号の無効事由がある無効な特許というほかない。
2 右のとおり本件発明<1>及び本件発明<2>は、明らかに無効というべきであり、公然周知の技術からなる取付方法は本件発明の特許請求の範囲から除かれていると限定的に解釈することによって、初めて有効となる。
したがって、本件発明<1>の出願当時、磁石によりフィルターを取り付ける方法は公然周知であったから、本件発明<1>でいう「把手」は限定的に解釈すべきであり、物件一のようなものは含まない。また、本件発明<2>の出願当時、マジックテープでフィルターを取り付ける方法は、公然周知であったから、本件発明<2>でいう「鉤状突起」は限定的に解釈すべきであって、それによれば物件二のようなものは「鉤状突起」に含まれない。
【被告の主張】
本件発明<1>及び<2>は、特許庁の査定によって新規性、進歩性があるものとして特許査定されたものであり、公然周知の技術のみからなるわけではない。また、三菱アルミニウム商品が原告主張の時から製造、販売されていたわけではない。したがって、本件発明<1>及び同<2>の構成要件を原告主張のように縮小解釈する理由はない。
四 争点4(原告は、本件特許権につき先使用に基づく通常実施権を有するか)について
【原告の主張】
原告は、本件発明<1>及び本件発明<2>の出願日(平成二年一月二八日)より前である平成元年一一月頃から、磁石によりフィルターを取り付ける製品の発売に向けて、磁石の形状や磁石を収納するケースの検討を行い、製品製造にかかる製造コストの見積作業にも入っていたし、また、右出願日より前から、換気扇用のフィルターの取付部材としてマジックテープを使用しており、特許請求の範囲にかかる発明を実施する事業を行い、あるいは事業の準備を行っていたので、原告には、特許法七九条に基づく通常実施権を有する。したがって、物件一及び物件二の製造、販売は何ら本件特許権を侵害するものではない。
【被告の主張】
原告の先使用の主張はすべて否認する。原告は、先使用にかかる具体的な事実関係を何ら明確にしていない。磁石によるフィルター取付方法を具体的に示唆するものはなく、事業の準備というにはほど遠いし、また、マジックテープにるフィルターの取付方法について、何をどのように先使用したのか、図面などにより具体的に主張すべきであるのにしていない。
五 争点5(本件告知行為は、被告の原告に対する不法行為を構成するか)及び争点6(被告が、原告に対し、損害賠償義務を負う場合に支払うべき金銭の額)について
【原告の主張】
1 前記一、二、三及び四それぞれにおける【原告の主張】のとおり、物件一及び物件二は、本件特許権を何ら侵害するものではない。
にもかかわらず、被告が、平成七年一月頃、原告の取引先である清水産業株式会社及び株式会社コジットに対し行った本件告知行為の結果、原告は、右二業者から物件一及び物件二の取引中止を申入れられた。
相手方の製品が特許権の侵害品である旨を製造者自身に対してではなく、製造者の取引先等に警告する場合においては、その製造者に対し警告をなす場合に要求される注意義務に比べて、より一層の慎重さ、すなわち高度の注意義務が要求されるというべきである。
本件においては、被告は、本件特許権が単に特許庁で登録になっているというだけで、何らの調査等も行うことなく、原告の取引先に対して警告行為を行ったのであるから、被告に故意又は過失がある。
2 本件告知行為によって、原告の取引先は原告との取引を中止し、被告と取引をするようになった。このため、原告の売上は大幅に減少し、莫大な売上減少の損害を被った。原告は、原告が被った損害の一部である五〇〇万円につき、損害賠償を求める。
【被告の主張】
1 本件告知行為は、本件特許権に基づく正当な権利行使であり、不法行為を構成することはない。
仮に、本件発明<2>が三菱アルミニウム商品の販売を理由に全部公知とされ、それゆえに何らかの縮小解釈がなされて物件二の取付方法が本件発明<2>の技術的範囲に属しないとされるとしても、被告は、本件告知行為当時、右公知技術の存在を知らなかったから、本件告知行為を行うに当たって、被告に故意又は過失はない。
2 原告が被ったと主張する、損害額については争う。
第四 争点に対する当裁判所の判断
一 争点1(一)(物件一の取付方法は本件発明<1>の技術的範囲に属するか)及び同(二)(物件一は本件発明<1>の実施にのみ使用する物か)について
1 甲第一号証によれば、本件発明<1>の構成要件を分説すると、前記第三の一【被告の主張】1(一)記載のとおりであることが認められ、また、物件一の取付方法を本件発明<1>の右構成要件に対応して分解すると、前記第三の一【被告の主張】1(二)記載のとおり(ただし、同bの「把手付き磁石」を「磁石を入れた突起付きケース」と読み替える。)であることが認められる。
そして、構成aは構成要件Aを、構成cは構成要件Cを充足していることは明らかであり(当事者間にも争いがない)、構成bの「磁石を入れた突起付ケース」が構成要件Bの「把手付きのマグネットホルダー」に当たるかが問題となる。
2(一) 本件発明<1>にいう一把手付きのマグネットホルダー」の意味であるが、一般に、「はしゅ(把手)」とは「器物の、手で握り持つための突き出た部分。とって。」、「とって(取っ手・把手)」とは「手に持つためにとりつけた、器物の突き出た部分。つまみ。え。とりて。」、「マグネット」とは「磁石。磁鉄。」、「ホルダー」とは「<1>支えるもの。挟むもの。<2>保持者。」をそれぞれ意味する(いずれも広辞苑第四版)から、「把手付マグネットホルダー」とは一般的にいって「取っ手の付いた磁石支持具」を意味すると解される。そして、特許出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)及び図面の記載を検討すると、本件明細書の「発明が解決しようとする課題」の欄には、「本発明は・・・簡単にフィルターを排気口に取付けることができて、取替等も容易な排気口へのフィルター取付け方法を提供することを目的とする。」(本件特許公報3欄7行~10行)と本件発明の目的が明示されており、本件発明<1>の「把手付きマグネットホルダー」に関しては、「作用」の欄に、「フィルターの周囲は点在する複数の把手付きのマグネットホルダーによって固定されているので、容易にフィルターの交換を行うことができる。」(同3欄34行~36行)と記載され、「発明の効果」の欄に「排気口に直接フィルターを被せ、その周囲を把手付きのマグネットホルダーによって固定しているので、フィルターの取付け及び交換が極めて容易である。」(同5欄13行~15行)と記載されており、「実施例」の欄には、第一実施例について、「マグネットホルダー13は、周囲の合成樹脂素材の把手14が設けられ、中央部に鉄製の缶15に間隔を開けて配置された強力な磁石16が配置されている。」(同4欄19行~21行)と記載され、第一実施例に係る排気口へのフィルター取付方法を示す本件特許公報第1図において、マグネットホルダー13は、大径の円筒状部分から把手14が突き出されて設けられ、該円筒状部分には缶15を介して磁石16がぴったりと収納された状態が図示されていることが認められる(甲一)。右のような本件明細書及び図面の記載に照らせば、本件明細書において「把手付きのマグネットホルダー」の語は、前記の一般的な言葉の意味と異なる特殊な意味で用いられているものではなく、構成要件Bにいう「把手付きのマグネットホルダー」とは、フィルターの取付けあるいは取り外しの際にフィルターを固定する磁石の着脱をしやすくするため、持ちやすいように取っ手がつけられた、中に磁石の入ったケースをいうと解するのが相当である。
(二) 当事者間に争いのない別紙物件目録一の記載と、検甲第二号証によれば、物件一を構成する磁石を入れた突起付ケースは、本体が外径約一六・五mm・内径約一五・五mm、深さ約二・五ないし三・五mmの円筒状で、底面から約一mmの部分に、長さ一一・五mmで幅約四mmの長方形状のものが、円筒状部分の底面部とほぼ平行に設けられているフライパン状の形状の金属ケースであることが認められる。そして、このような突起付ケースの使用方法としては、円筒状部分の上縁部分をレンジフード側に向け、円筒状部分の上縁部とレンジフードとの間でフィルターを押さえるように使用する方法のほかに、円筒状部分の底部をレンジフード側に向け、円筒状部分の上縁部をレンジフードと反対側に向けて、円筒状部分の底部とレンジフードとの間でフィルターを押さえるように使用する方法も一応考えられるが、後者の方法では、磁石の磁力線がケースの厚み等の影響を受けて弱くなり、実際にはフィルターを止めることはできないことが検甲第二号証によって明らかであるから、物件一の使用方法としては、前者(円筒状部分の上縁部分をレンジフード側に向け、円筒状部分の上縁部とレンジフードとの間でフィルターを押さえるように使用する方法)と認めるのが相当であり、以下この方法について検討する。
右方法によれば、突起付ケースの突起部分とレンジフードの表面との間には一mm程度の隙間ができることになるが、実際の使用に当たっては、突起部分とレンジフードとの間にはフィルターが介在するから、その厚みにより突起付きケースとレンジフードの表面との間にはほとんど隙間がない状態になると考えられる。しかも、突起付きケースの長方形状の部分は、長さ約一一・五mm・幅約四mmで円筒状部分の底面よりもその面積は小さいことからすると、右長方形状の部分を指先でつまんで取り外したり、取り付けたりするのはかえって難しいと認められる。
もっとも、突起付きケースの突起部分を折り曲げて取り付けた場合には、突起部分を持つことによって、突起付きケースを取り付けたり、取り外したりしやすくなる。しかし、検甲第二号証のパッケージの写真によっても、突起が曲げられているか否かは判然とせず、また、右パッケージ中の使用方法の説明中には右のような使用方法を示唆する記載もないことからすると、突起部分を折り曲げるのが物件一の使用方法として予定されているとは認められない。
したがって、物件一の突起付きケースの突起部分は、フィルターの取付け及び交換の際に磁石を入れたケースを持ちやすいようにするという「把手」としての作用を有するとはいえない。そうすると、物件一の「磁石を入れた突起付きケース」は、本件発明<1>の作用効果である、フィルターの取付や取り外しに当たって、マグネットホルダーの把手を手に取って、磁石の入ったマグネットホルダーを磁性材料で形成された排気口に着脱しやすくなるという作用効果を奏しないから、本件発明<1>の構成要件Bにいう「把手付きのマグネットホルダー」には該当しないというべきである。
3 右のとおり、物件一を構成する磁石を入れた突起付きケースは本件発明<1>の構成要件Bにいう「把手付きのマグネットホルダー」に該当しないのであるから、物件一の取付方法は本件発明<1>の技術的範囲に属しない。
したがって、争点1(二)(磁石を入れた突起付ケースは本件発明<1>の実施にのみ使用する物であるか)について検討するまでもなく、物件一を製造、販売することは、本件特許権を侵害するものとはみなされない。
二 争点2(一)(物件二の取付方法は本件発明<2>の技術的範囲に属するか)及び同2(二)(物件二は本件発明<2>の実施にのみ使用する物か)について
1 甲第一号証によれば、本件発明<2>の構成要件を分説すると、前記第三の二【被告の主張】1(一)記載のとおりであることが認められ、また、物件二の取付方法を本件発明<2>の右構成要件に対応して分解すると、前記第三の二【被告の主張】1(二)記載のとおり(ただし、同cの「マジックテープの鉤状突起」を「マジックテープ(雄側)の表面にある多数のループ状の輪」と読み替える。)であることが認められる。
そして、構成bは構成要件Bを、構成dは構成要件Dを充足していることは明らかであり(当事者間にも争いがない)、構成aの「マジックテープ」が構成要件Aの「鉤状突起を設けた基盤」に当たるか否かが問題となる。
2(一) 甲第一号証によれば、本件発明<2>の構成要件Aの「鉤状突起を設けた基盤」について、本件明細書には、発明の詳細な説明中の「問題点を解決するための手段」の欄に「予め、装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取付け、その上から該排気口を覆う所定広さのフィルターを被せ、前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止するようにして構成されている。」(本件特許公報3欄22行~26行)、「作用」の欄に「鉤状突起が設けられた基盤を排気口の周囲に設けて、該鉤状突起にフィルターを掛止させているので、フィルターを簡単に排気口に取付け、その交換も容易にできる。」(同3欄44行~47行)、「実施例」の欄に「第6図は、・・・、排気口の周囲に適当間隔で鉤状突起28の設けられた基盤29を磁石30によって取付け、前記鉤状突起28にフィルター31の端を引っ掛けるようにしている。」(本件特許公報5欄4行~8行)、「発明の効果」の欄に「排気口の周囲に直接フィルターを被せ、予め取付けられた鉤状突起が設けられた基板に固定して、フィルターを固定しているので、極めて簡単にフィルターの交換が行える。」(同5欄22行~25行。なお、23行の「取付けけられた」は「取付けられた」の誤記と認められる。)との記載があるが、「鉤状突起を設けた基盤」についての具体的な説明は格別なされていないところ、図面第6図(第五実施例に係る排気口へのフィルター取付方法を示す断面図)には、断面コ字状の基盤29のコ字状内部空間に磁石30を収納し、外側に先端部が尖り、かつ、先端部に向けてわずかに曲がった形状の突起28が斜め同一方向に傾斜して三本設けられており、三本の突起にはフィルター31の端部近傍が引っ掛かった状態が図示されていることが認められる。また、「鉤(かぎ)」とは、一般的に、「先の曲がった金属製の具。また、それに似たもの。」(広辞苑第四版)をいうから、「鉤状」とは、一般的には「先の曲がった形状」を指すものとして使用されると解される。本件発明<2>も、本件発明<1>と同じく、「簡単にフィルターを排気口に取付けることができて、取替等も容易な排気口へのフィルター取付け方法を提供することを目的とする」ものであり、そのための構成として、本件発明<2>は、右のように、「その装着しようとする排気口への周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取付け、その上から該排気口を覆う所定広さのフィルターを被せ、前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止するように」したものであるから、本件明細書の説明や図面を参酌すると、本件発明<2>にいう「鉤状突起を設けた基盤」とは、「その表面に先端部が尖った突起が傾斜ないし先端部に向けて曲がった形状で設けられており、装着しようとする排気口の周囲に予め取付けられ、その上に被せられたフィルターの周辺を該突起に直接掛止するようにした基盤」をいうと解するのが相当である。
(二) 一方、当事者間に争いのない別紙物件目録二の記載と、検甲第三号証によれば、物件二を構成するマジックテープ(雄側)は、縦約四cm、横約一cmの長方形状で、その表面に、輪の最頂部からやや下方の部分に輪の一部を切断して切れ目が設けられた、ループ状の輪が多数設けられたもので、合計六片あり、裏面の保護紙をはがしてレンジフードに接着できるようにしたものであることが認められる。
右のようなマジックテープの表面の構造は、一般的な意味での「鉤状突起」を観念させるようなものではないし、「その表面に先端部が尖った突起が傾斜ないし先端部に向けて曲がった形状で設けられて」いるとはいえない。しかも、マジックテープの掛止作用は、一部を切断して切れ目が設けられた、ループ状の輪の一方側部分と他方側部分の両者からなることを不可欠の要素とするという構造によっており、当該輪の切れ目部分から進入した繊維状のものは、輪を切断した一方側部分と他方側部分の両者の相互作用により輪から抜け出し難いように規制されることにより、掛止の効果が有効に発揮されるものである。したがって、マジックテープの掛止作用は、本件発明<2>の「その表面に先端部が尖った突起が傾斜ないし先端部に向けて曲がった形状で設けられて」いる構造による掛止作用とは、質的に異なるものというべきである。
また、マジックテープ(商標名)自体は、本件発明<2>の出願前から存在し、広く用いられていて周知のものであり、そのうちの雄側のみを使用してパイル生地等を組み合わせて使用することも衣料その他の分野で行われていたものである(甲一〇の1・2、弁論の全趣旨)し、本件発明<2>より先願の複数の実用新案登録出願の明細書において、「面状ファスナー」又は「面ファスナ」との一般用語で、換気扇取り付けフィルター装置(出願人は被告)や換気扇カバーの考案にマジックテープを用いることを明示した例もあった(甲四添付の実公平二・四三五二号実用新案公報、甲一四、一五)ところ、本件明細書には、本件発明<2>の「鉤状突起が設けられた基盤」にマジックテープ(面状ファスナー、面ファスナ)が含まれることを示唆するような記載は全く見当たらない。
以上からすると、マジックテープは、本件発明<2>の構成要件Aでいう「鉤状突起を設けた基盤」には該当しないというべきである。
3 したがって、物件二を構成するマジックテープが本件発明<2>の構成要件Aにいう「鉤状突起を設けた基盤」に当たらない以上、物件二の取付方法の構成aは、本件発明の構成要件Aを充足せず、よって、本件発明<2>の技術的範囲に属しないというべきである。
そして、右のとおり、物件二を構成するマジックテープが本件発明<2>の構成要件Aにいう「鉤状突起を設けた基盤」に当たらないのであるから、争点2(二)(物件二は本件発明<2>の実施にのみ使用する物であるか)について検討するまでもなく、物件二を製造、販売することは本件特許権を侵害するものとみなされない。
三 争点5(本件告知行為は、被告の原告に対する不法行為を構成するか)及び争点6(被告が、原告に対し、損害賠償義務を負う場合に支払うべき金銭の額)について
1 前記一及び二のとおり、物件一及び物件二を製造、販売することは、本件特許権を侵害するものとはみなされないのであるから、本件告知行為が、被告の原告に対する不法行為を構成するかについて検討する。
本件告知行為、すなわち、被告が原告の取引先であるところの清水産業株式会社及び株式会社コジットに対し、物件一及び物件二が本件特許権を侵害する旨口頭で告知したことについては(その時期を除き)当事者間に争いはなく、また、甲第一九、第二〇号証、原告代表者本人及び被告代表者本人各尋問の結果によれば、平成六年末から平成七年初め頃に本件告知行為が行われたこと、原告は、株式会社コジットに対しては平成七年五月以降、清水産業株式会社に対しては平成七年一月以降、物件一及び物件二を出荷していないことが認められる。自己が取り扱っている物件を第三者の特許権を侵害している旨の告知を受けた取引先が訴訟等の紛争に巻込まれるのを恐れるなどにより当該物件の取引を停止するに至ることはごく自然のことと考えられることも考慮すると、本件告知行為によって、原告と株式会社コジット及び清水産業株式会社との取引が停止するに至ったものと推認するのが相当であり、右認定を覆すに足りる証拠はない。
被告は、本件告知行為は本件特許権に基づいて行った正当な権利行使であって、不法行為を構成することはない旨主張する。しかしながら、前記一及び二のとおり、物件一及び物件二はいずれも本件特許権を侵害するものではなかったのであるから、物件一及び物件二が本件特許権を侵害する旨第三者である原告の取引先に対して告知したことは、結局、虚偽の事実を告げたことになるのであって、このような行為が違法性を有すると評価されることは免れないといわざるをえない。そして、ある物件が特許権を侵害している旨取引先等に告知すれば、告知を受けた相手方が(紛争に巻き込まれるのを恐れる等動機はさまざまであるにしても)当該物件の取扱を停止するであろうことは十分予想できることであり、むしろ、そのような効果をねらって告知をするのが通常であるし、また、その結果、当該物件の製造者が取引先の喪失等の影響を受けることもまた十分に予想できるところである。したがって、ある物件が特許権を侵害することを告知をするに当たっては、当該特許発明の技術的範囲、当該物件の構成と特許発明との対比等について、事前に十分な調査、検討をした上で行うべき注意義務があるものというべきである。
しかるところ、本件においては、前記のとおり、本件特許権の無効事由の存在について検討するまでもなく、物件一及び物件二と本件発明<1>及び<2>との対比によって、物件一及び物件二が右各発明の構成要件を充足しないものと判断されるのであり、この点について被告において、十分な調査、検討をしたことを認め得る証拠もない。
したがって、被告には、本件告知行為によって虚偽事実の流布をしたことにつき、少なくとも過失があったものというべきである。
よって、本件告知行為は、被告の原告に対する不法行為を構成するというべきである。
2(一) そこで、被告が原告に対して支払うべき金銭の額について検討するに、甲第一九、第二〇号証(ただし、後記認定に反する部分は採用しない。)及び原告代表者尋問の結果によれば、次の事実が認められ、他にこの認定を左右するに足りる証拠はない。
(1) 原告は、株式会社コジットに対して、商品番号A-01が付された物件二を単価二七〇円で平成六年一〇月から平成七年四月までの間五六四〇個、月平均八〇五・七個出荷したこと、平成七年五月以降出荷が停止されていること、平成七年五月から平成九年三月までの間の月平均出荷予想数は一二六〇個で、出荷予想減差数三二一六〇個であること、本件告知行為による平成七年五月から平成九年三月までの間売上減金額は八六八万三二〇〇円であることが認めらる。
(2) 原告は、清水産業株式会社に対して、商品番号A-82を付した物件一を単価五五五円で平成二年六月から平成六年一二月までの間三三九九五個出荷したこと、平成七年一月以降出荷されていないこと、原告は平成七年中に物件二を構成する磁石を入れたケースの形状をフライパン状から扇形状に変更し、平成七年一二月から販売を開始したこと、月平均出荷予想数は六五〇個程度で、出荷予想減差数は右設計変更後の商品の販売を始めるまでの一一か月間で、七一五〇個であること、本件告知行為による平成七年一月以降の売上減金額は三九六万八二五〇円である。
また、原告は、清水産業株式会社に対して、商品番号A-72-6を付した物件二を単価五〇四円で平成三年六月から出荷していたこと、月平均出荷予想数が二八〇個程度であったこと、平成七年一月から平成七年八月までの間出荷されていないこと、出荷予想減差数は二二四〇個(二八〇個×八か月)で、売上減金額は一一二万八九六〇円(五〇四円×二二四〇個)である。
(3) 物件一の利益率は約五〇%であり、物件二の利益率は約四五%である。
(二) 右の事実からすると、本件告知行為によって、原告は、物件一につき三九六万八二五〇円の、物件二につき九八一万二一六〇円(八六八万三二〇〇円+一一二万八九六〇円)の売上が減少し、結局、物件一につき一九八万四一二五円(三九六万八二五〇円×五〇%)の、物件二につき四四一万五四七二円(九八一万二一六〇円×四五%)の、合計六三九万九五九七円の利益が得られなかったということができる。
(三) よって、本件告知行為により少なくとも五〇〇万円の損害を被ったとしてその賠償を求める原告の請求は理由がある。
第五 結論
よって、原告の請求はいずれも理由があるから、主文のとおり判決する。
(平成一〇年八月二七日口頭弁論終結)
(裁判長裁判官 小松一雄 裁判官 高松宏之 裁判官 小出啓子)
物件目録一
レンジフード用のフィルター装置であって、レンジフードの吸入口を覆うフィルターと該フィルターをレンジフードに固定する磁石と該磁石を入れるケースとを有する添付図面1~10の構造のレンジフード用フィルター装置
(図面の説明)
図1は、フィルターの外観を示す斜視図である。
図2は、磁石の側面図、図3は、磁石の平面図、図4は、磁石をケースに入れた状態の断面図である。
図5は、磁石を入れるケースの斜視図、図6は、磁石をケースに入れた状態の斜視図、図7は、磁石をケースに入れた状態の側面図、図8は、磁石をケースに入れた状態の平面図、図9は、磁石をケースに入れた状態の裏面図である。
図10は、フィルターを磁石によりレンジフードに固定する方法を示す図である。
図1
<省略>
図2
<省略>
図3
<省略>
図4
<省略>
図5
<省略>
図6
<省略>
図7
<省略>
図8
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図9
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図10
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物件目録二
レンジフード用のフィルター装置であって、レンジフードの吸入口を覆うフィルターと該フィルターをレンジフードに固定するマジックテープとを有する添付図面1~7の構造のレンジフード用フィルター装置
(図面の説明)
図1は、フィルターの外観を示す斜視図である。
図2は、マジックテープの裏面図、図3は、マジックテープの平面図、図4は、マジックテープの正面図、図5は、マジックテープの側面図、図6は、マジックテープの表面にある多数のループ状の輪の一部拡大図である。
図7は、フィルターをマジックテープによりレンジフードに固定する方法を示す図である。
図1
<省略>
図2
<省略>
図3
<省略>
図4
<省略>
図5
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図6
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図7
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(19)日本国特許庁(JP) (12)特許公報(B2) (11)特許出願公告番号
特公平6-7895
(24)(44)公告日 平成6年(1994)2月2日
(51)Int.Cl.5B01D 46/10 F24F 7/06 識別記号 B 101 A 庁内整理番号 7059-4D 6925-3L F1 技術表示箇所
請求項の数 3
(21)出願番号 特願平2-17560
(22)出願日 平成2年(1990)1月28日
(65)公開番号 特開平3-229608
(43)公開日 平成3年(1991)10月11日
早期審査対象出願
(71)出願人 999999999
カースル産業株式会社
福岡県北九州市小倉北区緑ヶ丘3丁目6番9号
(72)発明者 渡邊健司
福岡県北九州市小倉北区緑ケ丘3丁目6番9号
(74)代理人 弁理士 中前富士男
審査官 松本悟
(56)参考文献 実開 平1-139811(JP、U)
実開 昭58-78418(JP、U)
実開 昭58-35729(JP、U)
実開 昭59-195436(JP、U)
実開 昭58-41429(JP、U)
(54)【発明の名称】 排気口へのフィルター取付け方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】装着しようとする排気口を覆う広さのシート状のフィルターで該排気口の入口を直接覆い、該フィルターの周囲を点在する複数の把手付きのマグネットホルダーによって押さえて該排気口に固定することを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。
【請求項2】予めフィルターの取付け部分にそれぞれのマグネットホルダーを個別に吸着させる凸縁付の磁性板が固着されていることを特徴とする請求項1記載の排気口へのフィルター取付け方法。
【請求項3】予め、装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取付け、その上から該排気口を覆う所定広さのフィルターを被せ、前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止したことを特徴とする排気口へのフィルター取付け方法。
【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は排気口(換気扇及びレンジフード等をいう)に不織布等からなるシート状のフィルターを装着する方法に関する。
〔従来の技術〕
換気扇あるいはレンジフードは周囲から油煙等を吸い込むので、汚れが酷く掃除が大変であるので、吸い込み口に取替可能なフィルターを取付けることが行われている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、従来の換気扇カバーあるいはレンジフードカバーは予め合成樹脂等からなる枠で吸入口を覆い、表面から不織布等からなるフィルターを固着する構造となっていたので、取付けが面倒であり、更には今度はフイルターについた油によって枠が汚れるので有形の枠の処理が面倒であるという問題点があった。
また、従來の枠付きの換気扇カバーにおいては、枠に装着されるカバーの形が決まっているので、広い不織布を自由に裁断して使用することは一般家庭では因難であった。
本発明はこのような事情に鑑みてなきれたもので、簡単にフィルターを排気口に取付けることができて、取替等も容易な排気口へのフィルター取付け方法を提供することを目的とする。
〔問題点を解決するための手段〕
前記目的に沿う請求項1記載の排気口へのフィルター取付け方法は、装着しようとする排気口を覆う広さのシート状のフィルターで該排気口の入口を直接覆い、該フィルターの周囲を点在する複数の把手付きのマグネットホルダーによって押さえて構成されている。
また、請求項2記載の方法は請求項1記載の方法において、予めフィルターの取付け部分にそれぞれのマグネットホルダーを個別に吸着させる凸縁付の磁性板が固着されて構成されている。
そして、請求項3記載の排気口へのフィルター取付け方法は、予め、装着しようとする排気口の周囲に表面に鉤状突起が設けられた基盤を取付け、その上から該排気口を覆う所定広さのフィルターを被せ、前記鉤状突起に該フィルターの周辺を直接掛止するようにして構成されている。
〔作用〕
請求項1、2記載の排気口へのフィルター取付け方法においては、排気口より大きい広さを有するフィルクーで排気口を覆い、周囲を点在する複数の把手付きのマグネットホルダーによって押さえているので、張った伏態で排気口をフィルターで覆うことができ、排気と共に吸引とれる油等はフィルターによって捕捉される。そして、フィルターの周囲は点在する複数の把手付きのマグネットホルダーによって固定されているので、容易にフィルターの交換を行うことができる。
特に、請求項2記載の排気口へのフィルター取付け方法においては、凸縁付きの磁性板をマグネットホルダーを取付ける位置に配置しているので、相手側に非磁性体であっても容易にマグネットホルダーを取付け得る。更に、凸縁によって吸着されたマグネットホルダーが移動しない。
また、請求項3記載の排気口へのフィルター取付け方法は、鉤状突起が設けられた基盤を排気口の周囲に設けて、該鉤状突起にフィルターを掛止させているので、フィルターを簡単に排気口に取付け、その交換も容易にできる。
〔実施例〕
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明して、本発明の理解に供する。
ここに、第1図は第1の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示す側面図、第2図は該取付け方法の工程を示す斜視図、第3図は第2の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示す斜視図、第4図は第3の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示す側面図、第5図は第4の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示す側断面図、第6図は第5の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示す断面図である。
第1図、第2図に示すように第1の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法においては、まず第2図に示すようにフィルターの一例である難燃性の不織布10を、決11等で装着しようとする排気口より大きい広さに切断して、取り付けようとする排気口に適合するように合わせる。そして、所定広さに切断された不織布10を排気口の一例であるレンジフード12の周囲に被せ、第1図に示すように周囲を点在する複数のマグネットホルダー13によって固定する。
この場合、マグネットホルダー13は周囲の合成樹脂素材の把手14が設けられ、中央部に鉄製の缶15に間隔を開けて配置された強力な磁石16が配置されている。なお、前記磁石16、缶15及び把手14は接着剤によって固着されている。
従って、レンジフード12は該不織布10で覆し、マグネットホルダー13によって周囲を固定しているので、油煙は該不織布10によって捕捉され、取替に際してはマグネットホルダー13を除去し、再度新しい不織布10を所定位置において、周囲をマグネットホルダー13によって止めることになる。
第3図の第2の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法であって、他のレンジフード17に適用した場台を示すが、図に示すようにフィルターの一例である不織布18を折り曲げて排気口19の周囲に、前記マグネットホルダー13で押圧しながら取付けている。
第4図は第3の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示し、排気口が鉄製でない場合にはマグネットボルダー13が吸着しないので、予め、磁性板20を接着剤21等で排気口の周囲に取付けた後、フィルター22を被せてマグネットホルダー13によって押圧している。なお、前記磁性板20の周囲は凸縁24が設けられ、マグネットホルダー13が移動しないようになっており、例えば垂直の壁に取付ける場合には特に効果がある。
第5図は、第4の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法であるが、図に示すように突出体の一例である製鉄の缶付磁石25を排気口の周囲に適当間隔で取付け。フィルター26を被せて更にキャップ27を被せ、フィルター26を止めるようにしている。なお、前記実施例において、突出体を接着剤あらいはネジ等で排気口の周囲に取付けることも可能であろ。
これによって、排気口の周囲に強固にフィルター26の端を固定することができ、その交換もキャップ27を抜いて行うので極めて容易である。
第6図は、第5の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示すが、排気口の周囲に適当間隔で鉤状突起28の設けられた基盤29を磁石30によって取付け、前記鉤状突起28にフィルター31の端を引っ掛けるようにしている。
これによってフィルター31の周囲を固定することができる。
〔発明の効果〕
請求項1、2記載の排気口へのフィルター取付け方法は、排気口に直接フィルターを被せ、その周囲を把手付きのマグネットホルダーによって固定しているので、フィルターの取付け及び交換が極めて容易である。
特に、請求項2記載の排気口へのフィルター取付け方法においては、それぞれのマグネットホルダーを吸着させろ凸縁付きの磁性板が排気口の周囲に固着されているので、吸着されたマグネットホルダーが移動しないという利点を有する。
そして、請求項3記載の排気口へのフィルター取付け方法においては、排気口の周囲に直接フィルターを被せ、予め取付けけられた鉤状突起が設けられた基板に固定して、フィルターを固定しているので、極めて簡単にフィルターの交換が行える。
更には、請求項1~3記載の排気口へのフィルター取付け方法は、装着するフィルターは交換用の広いフィルターを用意し、これを装着する排気口の大きさに合わせて自由に切断するので、従来のように枠付きフィルターあるいは特定構造のフィルターを用意する必要がなく、また、従来のように枠あるいは支持体を使用しいないので、取替にあってはフィルターの交換のみで済み、極めて経済的である。
【図面の簡単な説明】
第1図は第1の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示す側面図、第2図は該取付け方法の工程を示す斜視図、第3図は第2の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示す斜視図、第4図は第3の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示す側面図、第5図は第4の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示す側断面図、第6図は第5の実施例に係る排気口へのフィルター取付け方法を示す断面図である。
〔符号の説明〕
10………不織布(フィルター)、11………缺、12………レンジフード(排気口)、13………マグネットホルダー、14………把手、15………缶、16………磁石、17………レンジフード、18………不織布(フィルター)、19………排気口、20………磁性板、21………接着剤、22………フィルター、24………凸縁、25………缶付磁石、26………フィルター、27………キャップ、28………鉤状突起、29………基盤、30………磁石、31………フィルター
【第1図】
<省略>
【第4図】
<省略>
【第5図】
<省略>
【第6図】
<省略>
【第2図】
<省略>
【第3図】
<省略>
特許公報
<省略>
<省略>